パジャイスリス修道院に行くため、リトアニア第二の都市カウナスへやってきた。
日本で「リトアニアに行く」と話すと「それなら杉原記念館へ行け」とよく言われた。
修道院へ行く前に尋ねようと某歩き方を片手に歩き出したのだが、これは情報を掲載していても、案内する気はない地図だった。
人気のない静かな住宅街を歩いていると、近くに記念館があるように思えなかった。
よくわからない通りを歩き、諦めて駅に戻ろうとした瞬間、曲がり角でばったりとおばあさんに出会った。
おばあさんは私の姿を見ると
「Sugihara!」
と大きな声で言って、笑顔で方向を指差した。
思わず近づくと
「Follow me!」
と片言のような英語で言ってくれた。
ちょっといたずらっぽく笑い(なんともかわいらしかった)一緒に歩き出した。
嬉しかった。
おばあさんが「Follow me!」と言う姿は、映画で観たジャンヌ・ダルクの姿を思い出させた。
もしあの頃、すでにFacebookやtwitterが流行していたとしても、
私はやはりジャンヌ・ダルクを連想したと思う。
すぐそこの細い階段を登り始めて驚いた。長い。
おばあさんはパンがたくさん入ったカゴを持っていて、しんどそうだった。
自分もバックパックを背負っていたし、言葉が伝わるかが心配だったけれど、
自然な合図のようにカゴを持たせてもらえた。
ずっしりと、見た目以上に重かった。
2人で息を切らせながら「重いね」とか「長い階段だね」と片言の英語で言っていると、
「この階段、1000段あるのよ!」
というようなことをおばあさんが言ったと思う。びっくりして目を丸くすると。
「あっ、間違えた。100よ。」
と言い直してくれて、2人で笑った。
階段を登りきると、おばあさんは右に、私は左へ真っすぐ行けと言われた。
「Labai achiu!」
と、リトアニアの「とってもありがとう」を言いながら別れた。