共通の目的を持った人たちが集まる「会」はたくさんあるけれど、私は「デッサン会」に参加している。週末に貸しスペースに集まって、お互いを描きあったり、モデルさんに来てもらって、その姿を3時間程ひたすらに描き続ける。私が参加しているデッサン会は、どこもスキルに関わらずただ一緒に描く空間を共有させてくれる。目黒や原宿といったアクセスの良い場所で、いつも刺激をもらって充実した週末を過ごさせてもらっている。
セツ・モードセミナーを卒業してデッサン会に参加するようになって2年になる頃、「バレリーナデッサン会」の募集を見て、即座に申し込んだ。
学校に通ってデッサンをするようになってから、体の関節や動かし方は一律ではないと気がついた。運動と一言にいっても、バスケットとサッカーでは筋肉のつき方が異なっていく。中でもダンサーは特徴的だと思う。青山あたりを歩いて時間を潰していた時、バレエショップのポスターに目が止まった。一本足で背中を反らせたまま余裕の表情でポーズをとる姿は、美術モデルやクラスメートばかり描いていた私には衝撃だった。それからバレエの写真を探して絵を描いてみたけれど、いつか、同じ空間に立って見て描きたいと思っていた。
そんなことを思っていた頃から5年経っただろうか。普段は代々木デッサン会を主催している方が、飯田橋のマリンブルースタジオを貸し切って、男女二人のバレエダンサーを描く機会を作ってくださった。長年の夢は、2千円の参加費で実現した。
ダンサーの方の筋肉はおそらくインナーマッスルと呼ばれるもので、見るからにごつごつしたもののとは全く違って、しなやかに感じる。一見ほっそりしているのに、ポーズをとるとしかるべきところにうっすらと筋肉の形が見える。
それに加えて、全体的な柔らかい印象に驚いた。ハードな練習で得られたであろう無駄のない体に筋肉が付いているに、とてもソフトな感じがする。そして、指の先まで優雅だった。ポーズを切り替える瞬間さえ、一つの演技のようだ。
短い時間のデッサンを繰り返して、その美しさをなんとか捉えようとするけれど、とても難しかった。美しいポイントが多くて、それを全て見つけて描ききれないのだろうか。足を高く上げたポーズは、関節の可動域や、構図の奥行きや高さが美術モデルのデッサンと違いすぎて、もはや笑ってしまいそうだった。
描き手のために、普段はしない「ポーズの静止」をプロフェッショナルとして体現してくれた。ただ立っているだけ、座っているだけでもその姿には目を奪われるものがあって、自分もせめて、姿勢よくいようとすることにした。
- マリンブルースタジオ
- 東京都千代田区富士見2丁目4−1
- http://mbs.vpweb.jp
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