私が在学している間、セツ・モードセミナーには「Fi エスキース」という授業があった。
入学したときは、半年後の2級生になってから参加できる授業だった。
先生が準備してくれたテーマに合わせた洋服を着て、モデルさんがポーズをとってくれる。
いつものように10分で1枚デッサンを描いていく。
Fiは「ファッションイラスト」の略だろうと見当をつけていたが、調べるとエスキースは仏語で、下絵やスケッチのことを指すそう。
普段の「Cデッサン」というコスチュームデッサンの授業とは違って、「Fi エスキース」の授業ではエスキースを描き、後日「Fi合評」という授業の日には作品になったものを持参した。
私はこの授業が大好きだった。
絵の具にこだわらずに様々な素材を使うようになったのも、Fi合評の作品づくりがきっかけだった。
先生が用意してくれた洋服の魅力を、絵が下手でもなんとか表現したかったし、変なものを持っていくと先生が笑ってくれるのが嬉しかった。
卒業後もう一度セツ・モードセミナーに戻って、初めてのFiエスキースがあった。
先生や授業のスタイルは少し変わったけれど、あの時の高揚感を思い出した。