旅行中驚いたことの一つは、あちこちで花を見たことだった。
建物の2階の窓からはだらりとベコニアが垂れ下がり、路面ではビーチパラソルを広げただけの花屋さんをたくさん見た。
人の多い街中では花の束を少し雑に小脇にかかえた人がいて、彼がその人から一輪花を買って、彼女に渡していた。
移動中「かなり古いなぁ。倒れないかなぁ…」と思うアパートのベランダでも、花が咲いていた。
祖母と暮らしていれば、いつも知らぬ間に花瓶には新しい花が活けてあった。
自分はお腹が減ればサンドイッチを買うし、面白い本があれば買ったが、
花を買ったことはなかった。
恩師にこの話をすると
「番犬になるからと犬を飼う人と、かわいいから猫を飼う人がいる」
という例え話を教えてくれた。