4年前にこの本を手に取り、特に心に残したい章を出来るだけきれいな字でノートに書き写していた。
COW BOOKSや、今は暮らしの手帖の編集長として知られる松浦弥太郎さんが、日常生活で愛用しているモノを100選び、そのモノとのストーリーを丁寧に文章にされた随筆集だ。
めくってもめくっても、左ページにはモノの写真、右ページにはモノとの出会いや関係についての文章が。
100全てがこのスタイルで紹介されていて、読みやすいし、その様式美を追っていくだけでも気持ちがいい。
今日、一緒に仕事をした人にこの本をプレゼントした。
相手が若輩でも、文字通り一緒に、それでいて自由に仕事をさせてくれる人だった。
おかげで周囲の協力を得て自分の企画を実現させてもらうことができたし、好きなモノについても自由に話をした。
“一緒に仕事をする”ということは、特別な経験だと思う。
その人は仕事で5×3カードを使っていた。
「日々の100」の「001 レシピカードボックスと5×3カード」を読んでいた私は「ボックスには入れないんですか?」と思わず聞いたことがあり、いつかこの本を読んでみてほしいと思っていた。
転職されると聞いて、今がそのときだと思った。
贈答のために購入してパラパラめくっていると、手離すのが惜しくなってくる。
「010 タンタンがお手本」のファッションの感覚を知って、流行を追いかけることだけがおしゃれではないことに、とても安心した。
「099 高村光太郎詩集」を読み、この詩が松浦さんを暗闇から引っぱり上げてくれたというストーリーに、励まされた。インターネットで古書店から購入すると、店主の「光太郎の世界をお楽しみください」という手書きのメッセージが添えられていた。
そして、「006 村上開新堂のクッキー」で登場する、松浦さんを客に招いた主の「僕は、僕の好きなものを君に全部教えたいんだ。」というとっておきの口説き文句にはドキドキしたし、自分の中にも似た欲求がある気がして共感した。
「日々の100」を読んでほしい人に贈って、自分には「『路上』と『北回帰線』」を探そうと決めた。
大人だと思っていた20代に自分自身がなってしまったときに、この本を読んで、また新たな「大人とはいいものだ」という憧れを持てた。
それは、こどもの頃に持っていた大人像よりも、いいものだ。
「日々の100」にあげられているモノも素晴らしいけれど、改めて1つひとつのモノと向き合うという行為もとても美しい。
目が覚めれば枕に頭をのせていて、椅子に座って朝食をとり、服に袖を通し、靴を履いて出かける。
「モノ」と「心」のどちらを大切にすべきかという2択はナンセンスに思えて、モノと心の関係が大切だと確信できた。
このWebサイトに、自己紹介や説明がもっとあったほうがいいとアドバイスをいただくことがある。
私はどうやら、自分を客観的に見ること、それを言葉で人に説明することが苦手だ。
あまりモノを買わない、いただきもの、つくったものばかりでも、そうして側に集まったモノと向き合ってみよう。
まずは、一緒に仕事をできた方に差し上げられた「日々の100」を、001としよう。