Last Dessin

4年前の春、セツ・モードセミナーに入学して、初めてのデッサンでモデルをしてくださった方。

セツ先生の著書を入学前に読んで、「こんな人ほんとにいるの!?」と思っていた。

手は赤ん坊のように柔らかくむっちりしているのでもなく、反対に労働者のようにゴツゴツしているのでもない,シャープで繊細で長いのがいい.男らさいさも女らしさもないのがいい.

腕も力こぶが盛り上がらずにほっそりとしており,中年の女性のように肉づいてふんわりとせず,全体が筋ばっていて,付け根から手首までの太さに変化がほとんどないのがいい.

顔の長さよりも指の1節くらいは大きくないと,全体が顔ばかり大きく,背の小さい,スマートさからはおよそかけ離れた人に見えてしまう.

『新版デッサン・ド・モード』(美術出版社)長沢節

最初の授業で、この理想のスタイルを体現している方を目の前にして、驚いたことをよく覚えている。

そして、弓なりに体を反らせたポーズを一度決めると、涼しい顔でぴたりと動きがとまってしまう。少し口角が上がっているような気もした。

何度デッサンさせていただいても、驚いた。

昨年末、3年振りにセツに戻った。

やはり変わらないスタイルで、変わらずにポーズをとり、ぴたりと動きをとめてくださって、また驚いた。

その方がモデルを辞めると聞いた。

ずっと前から、辞める時を決めていたそうだ。

「もう描けない」と知ると、今まで贅沢な瞬間をたくさん描かせていただいていたと改めて思う。

心から、尊敬と感謝を。

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