金沢滞在中、21世紀美術館で唯一開催していた展示はフィロソフィカル・ファッション 3:ミントデザインズ ‒ happy people。
常設展示が準備中で、なんとなくミュージアムショップへ。
最近のミュージアムショップはセレクトショップのような感覚で、一見展示とは関係のない思わず手に取りたくなる雑貨や本もたくさん並んでいる。
その中に、変わったパターンのワンピースがあり、60代のおばと「こういうところ(美術館)で見るとすてきだけれど、私たちが普段着るのはちょっとね…」なんて話しながら楽しんだ。
隣のガラス張りの小さな部屋へ入ってみる。
大きなタペストリーが並んで、壁からさがっていた。
一枚いちまいが等身大の人の写真で、見比べると、様々な職業の人たちが、職場で撮っているようだった。
キュレーター(学芸員)、編集者、パン屋さん、靴職人、神職…
共通しているのは、鮮やかなプリントの洋服を、とても自然に身に着ていたこと。
銀髪のギャラリーオーナーが着る、明るいイエローとグレーのコートに、シルバーの靴。
パン屋さんが工房で来ている、プリントTシャツ。
若い職人さんから銀髪の女性まで、色とりどりのテキスタイルを身につけて、笑顔で立っている写真に、旅行中に立ち寄ったこれまた様々な来館者が見とれていた。
それは、mintdesigns(ミントデザインズ)の展示だった。
勝井北斗と八木奈央によるファッション・ブランド「ミントデザインズ」は、独自に開発するテキスタイルのユニークさを生かした衣服のデザインが注目されてきました。…(略)
衣服にとどまらず、日常生活の時間を豊かにするためのプロダクトデザインを目指す彼らの活動は、「流行」と同義ではない「ファッション」の可能性を提案しています。
本展は、「happy people」をテーマに、ミントデザインズの衣服を日常へ浸透させる実験です。東京と金沢で暮らす人々が、それぞれの日常空間のなかでミントデザインズに出会う、その瞬間を展示します。
展示作品なのに、誰も「着せられている」感じがしなかった。
「なんだか素敵ね」としばらく話しているうちに、さきほどミュージアムショップで「普段着るには派手すぎるかも…」と話していた洋服の写真だと気づく。本当に、最初はわからなかった。
おばも私も、特にストラップシューズが気になって、もう一度ミュージアムショップへ。
展示を見ていたら、銀髪で色の白いおばが、あのシルバーのストラップシューズにクロップドパンツを履いて買い物へ出かけるところを想像したら、すごくいい!ぜひそうなってほしい!と思った。
展示を見ただけで、同じ洋服や靴を見る眼がこんなに変わるなんて。
面白い経験だった。
今改めて、なぜあんなに見え方が変わったんだろう?と考えると…
洋服をコンセプチュアルに意匠を凝らせて展示すると、どこが遠い世界の話のような気がしてしまう。
今回は洋服を着ている人たちの職場や普段過ごしている場所で撮られた写真を、まさに等身大の大きさで見せられたからじゃないかな。サイズもポイントだった気がするんだ。
シンプルな展示方法で、モデルや女優さんじゃなくても、mintdesignsの洋服を着る人の日常がとても豊かなもので、happypeopleだとしっかり伝わった。
あら、東京でもまた別の展示を見られるじゃない。
- 【「VERTIGO」展】(終了)
- SFT GALLERY·国立新美術館 B1F
ちなみに、ストラップシューズは予算オーバーで、家にあったTシャツをちょっとプリント風にしてみた。
いつかは、あのストラップシューズやコートを着てみたい。