メダイヨン・マンション(Medaillons Mansion)とマヨルカハウス(Majolikahaus)

ウィーンの市場、ナッシュマルクト(Naschmarkt)散策中に目にすることができるユーゲント・シュティール (Jugendstil)時代の建築がある。メダイヨン・マンション(Medaillons Mansion)とマヨルカハウス(Majolikahaus)だ。

メダイヨン・マンション(Medaillons Mansion)とマヨルカハウス(Majolikahaus)

ユーゲント・シュティール (Jugendstil)は、ドイツ語圏の世紀末芸術のことで、フランス語でいうアールヌーボーにあたる。19世紀末から20世紀末初頭にかけてヨーロッパで流行した新しい芸術を求める熱気が、ウィーンでも広がったのだ。

オットー・ワーグナー(Otto Wagner)は1841年にウィーンで生まれた建築家で、グスタフ・クリムトらとともに新しい造形をめざしたウィーン分離派の1人。「芸術は必要にのみ従う(Artis sola domina necessitas)」という考えのもと、装飾性に機能性を加えた近代建築の様式を確立させ、後の多くの建築家に影響をもたらす。

メダイヨン・マンション(Medaillons Mansion)

彼自身も住んでいたというメダイヨン・マンションは、壁面の金のオブジェが豪奢で美しい。金細工は同じくウィーン分離派のコロマン・モーザー(Koloman Moser)によるもの。

マヨルカハウス(Majolikahaus)

マヨルカ焼きのタイルを用いたバラの木の装飾が美しいのがマヨルカハウス。青空のもと、無機的であるはずの建物に優美に咲く赤いバラの絵画的な美しさが際立っていた。

ワーグナー建築の面白さは、圧倒的にユニークでありながら美しく、また、それが溶け込むウィーンの街並みにあるのではないかと思った。例えば同じく世紀末芸術で、スペインのモデル・ニスモ建築で知られるガウディの建築も唯一無二のユニークなものであるが、それゆえに街中では異質な魅力を放っている。

100年の時を経たユーゲント・シュティールと、現在のウィーンの街並みが創り出している美は、この旅行をとても価値あるものにしてくれた。