アントニ・ガウディは自分が生きているうちにサグラダ・ファミリアが完成しないことを知り、「神はお急ぎではない」と言いながらも、サグラダ・ファミリア建築を引き継ぐ後の世代が何をすべきかわかるようにとファサードから造り始める。ガウディの生前に実現したのは地下聖堂とこの生誕のファサード。これは、ガウディの建築手法がいかにユニークで大胆であったことを語るエピソードの1つとなっている。
1894年に工事が始まり、2000年に完成。ファサードは全て完成すれば、受難のファサード、栄光のファサードと合わせて3つになる。生誕のファサードはイエス誕生の喜びを表現するもので、太陽が昇る東側に面している。
日本人彫刻家の外尾悦郎氏がファブットの天使像を制作したことでも有名だ。
ファサードの前に立ち尽くしていると、まるでサグラダ・ファミリアに話しかけられているようだった。荘厳で美しいけれど、語りかけてくるような彫刻。物語というのか、歴史というのか、これが信仰というものなのだろうか。言葉のわからない者にも、イエスの幼少期の出来事が見える。不信心で滅多なことを言いたくない私でさえ、信仰そのもののような建築だと思った。後から、サグラダ・ファミリアが「石の聖書」と称されていることを知った。
キリストの誕生から初めての説教を行うまでの逸話を表現した彫刻を、一つ一つ、まるで文章を読むような気持ちでゆっくりと見上げながら写真を撮った。