いつだったか突然、姉が大きな一眼レフカメラをくれたのだけれど、使い方がよくわからないままだった。
このままでは宝の持ちぐされだ…と思い立って、はじめに教わったのはテクニックは「長時間露光」。おそらく最初に習うべきことではないだろう。
教わったテクニックを試しながらシャッターをきる。もちろん最初からうまくいくはずはなく、絞りやシャッタースピードを少しづつ変えてみる。変えるたびに、建物の明かりや車のライトは違ったようにとらえられた。全く飽きる気配がなく、ずっと続けていられそうでこわいぐらいだった。食事に、買い物に行くたびに何度もなんども通り過ぎてきた交差点で、気がつけば1時間は過ごしていただろうか。行き交う人々をファインダー越しに眺めながら同じ場所に立っていると、自分だけ時間が止まってしまったようだった。カメラを一つ持つだけで、こんなに特別な感覚を味わえるのは知らなかった。はい、ちょっと自分に酔ってる。
「写真を撮るために出かけよう」と思ったことはなかったが、三脚なしで長時間露光撮影をするために、カメラを固定できる場所を探しながら夜の銀座を歩いていた。
今まで通り過ぎていた場所に、新しいお気に入りを見つけることもできた。友だちを連れてきて「こんなにいい所なのに今まで知らなかったでしょう?」と早く言いたい。