ロンドンはあまりに簡単に着いてしまった気がした。
東京からの直行便。学校で習った英語でコミュニケ−ションに困らない。
施設からサインボードまでよく整理されていたからだろうか。特に地下鉄に乗っていると、日本の地下鉄もここにならって作られたのだと感じる。
なんというか、違和感や戸惑いを感じることがなかったのだ。一週間程度の滞在では、街中で見かける人々の振る舞いにも、驚きを感じることがなかった。日本の文化と常識にどっぷり浸かって育った自分がヨーロッパを旅行しても、こんな風に感じる日が来るなんて、思ってもみなかった。
ただ、旅行の始めは彼らの英語を聞くたびに嬉しくなった。留学経験などなく、学校ではアメリカ英語を習っていた私がイギリス英語を聴く機会は、映画ぐらいだった。自分で言っていてばからしいけれど、イギリスらしいアクセントで英語を話す人々とすれ違いながら通りを歩いていると、まるで映画の世界の中に入ったようだった。
ヒースロー空港から宿までもすんなり着いた。日本からの旅行者が書くロンドンの手頃なホテルのレビューは「値段の割に部屋が小さい」が圧倒的に多かった。確かに、ホテルの部屋は想像していたより小さくて、世界有数の観光地に来たことを実感した。
なんとなく頭に描いていた初めての散策へ。
ふらふらと歩いていて、赤い看板や建物、車、洋服や靴を見つけると、ロンドンらしいように感じた。
雑誌やポストカードで見たことはことはあっても、実際にいるとは知らなかった、
赤いトレンチコートを着て自転車に乗る女性、お母さんに手を引かれて歩く小さくてもそれらしい赤いブレザーを着た女の子。
ロンドンは、ロンドンすぎると思ったのが、初めて観光に訪れた私の感想だった。